2020/11/16 アメリカと信州の話②

 今回はちょっと"大きな話"になるがご容赦願いたい。トランプ大統領が誕生した4年前、

私が週1日だけ教壇に立つ大学の女子学生からこんな質問を受けた。

「アメリカは民主主義なのに、何故トランプさんが当選したんですか?」

一瞬、私は答えに窮した記憶がある。

日本とは仕組みが違うから(州ごとの選挙人総取りシステムとか)。

メディアが読み違えたから等々、一般的な答えはいくつも並べられる。

だが「民主主義なのに」という彼女の根本的な問いへの解が出てこなかったのだ。

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【写真:半年ほどスクラップしてきた大統領選の記事・資料】

かの国の大統領選は、選挙人の多い州を多数制すれば勝ちにつながる基本構図がある。

だから今回も、多数の選挙人を擁する州が激戦州として注目された。

だが、それを支えるのはあくまでも1票であり、その1票の積み重ねである。

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票が拮抗してくるとトランプさんは「期日前投票と郵便投票の集計を止めろ」

と訴えた。この2つには対立候補への票が多いからというのが理由だ。

しかし、である。期日前と郵便投票のすべてが反トランプ票ではない。

中には当然、トランプ支持者の票も含まれている。

自身が勝ちたいがために、支持者票も含めそれらを全て切り捨てるという発想。

民主主義の選挙で選ばれたトップが、民主主義とはほど遠い頭の持ち主だったという事実。

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1票でも多い側の意見が採用される多数決が民主主義の基本である。

でも、そこには多数者と少数者の議論があってこそのはず。

「少数者の声を聴く必要はない」という4年前のトランプさんの物言いは、

今度の選挙でも健在だった。1票でも多ければ全て意のままという

ある種"幼稚"な発想は、さて民主主義と呼ぶに値するものか。

「民主主義なのに、何故?」 あの彼女の問いへの答えを、私は今も探している。

2020/11/11 アメリカと信州の話①

「なんで急に?と思ってたら、大統領選挙だったんですね。

 8月ころから急に上向いてきてるんです、仕事が」

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こう話すのは、「ゆうがたGet!」水曜レギュラーの

芸人・マンモウ飯田さん(写真:放送後のTSBメイク室にて)。

私がこの曜日のニュース解説を担当するようになって

かれこれ4年のお付き合いになる。

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上向いている、というのはテレビ出演云々の話ではなく、

ご実家の本職である自動車部品製造業のこと。

実はマンモウさん、会社経営者という顔もお持ちなのだ。

コロナ禍で今年春以降ずっと低迷していた部品の受注が、

8月頃から急に増え始め、今もハイペースが続いているという。

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聞けば、アメリカに輸出する車の部品なんです、との答えが。

「大統領選挙が近付くと全米で車の売れ行きがドンと伸びるんです。

 その余波がうちにも来てて。あの国では選挙ってお祭り感覚なんですかね」

アメリカのトップが誰になるか?その日本への影響はもちろん目が離せないが、

それ以前の影響が既に日本の一地方に届いていたことに正直驚く。

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「でもね」とマンモウさんが続ける。

「選挙が終わったでしょ。この後どうなるのか正直心配なんです。

 クリスマスから年末年始にうちの仕事がどうなってるのかなって」

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新型コロナ感染者1011万人(10日/米ジョンズ・ホプキンズ大学集計)。

日本の100倍の感染者を抱える巨大国家の"祭り"がいつまでも続くわけはない。

本当に心配なのは、"祭りの後"のはずである。

マンモウさん、ご心配ですよね。

 

2020/11/06 支度して下さい!

「秀一さん、もうちゃんとした手袋して下さい」

去る水曜の「ゆうがたGet!」生放送中、鈴木智恵・気象予報士からアドバイスをもらった。

自転車通勤族の私は、その日まで指先部分の露出した毛糸の手袋(写真)だった。

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ハンドルを握る掌さえ覆っていればまだ大丈夫、と高をくくっていたのだが、

この日辺りから指先が痛いと感じる日が多くなっていた。

日差しのある朝はいくらかマシなのだが、とっぷりと日が暮れた帰宅時間は

ひときわ厳しい気がする。

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「そろそろ晩秋から初冬に移り変わる時季。冬支度もして下さいね」

とは鈴木予報士の談。

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一気に進んだ長野市・若里公園の紅葉を見るにつけ(写真はわが愛車)

僅かひと月前はシャツ1枚で風を切っていたとは思えぬ季節の移ろい。

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世の自転車族のお仲間がた、そろそろ冬支度を致しましょうか。

2020/10/29 ニコルさんの形見

 仕事場の本棚に、使い込まれた茶色の表紙の図鑑が加わった。

「長野県動物図鑑」。初版発行は昭和53年。私が中学生の時分だ。

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「辞書を引くようにしてニコルがいつも使っていたものです。

 形見分けだと思ってお持ちください」

34年間マネージャーをつとめた森田いづみさんから手渡された時、

一瞬、表紙の文字が滲んで見えなくなった。

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 4月に急逝した作家のC.W.ニコルさん(信濃町在住)の愛用品。

挟まれたままの付箋には、ニコルさん直筆の書き込みも残る。

いつも頂いていたクリスマスカードや手紙で見慣れた筆跡が、

なんだかとても懐かしく思えた。

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 ニコルさんの森づくりと作家活動を支え続けてきたマネージャー、

森田いづみさんが彼の後任としてC.W.ニコル・アファンの森財団の

新しい理事長に就任した。

「ニコルならきっとこうしただろう、こう言っただろう」

残された言葉と思いは、森田さんの中にしっかりと息づいている。

新理事長が語る、日本の森のこれからは、今夜の「news every.」で。

2020/10/16 風の日に

 我が家の南向きのベランダに小さな風車がある。

10年以上も前、当時小学生だった息子が作った

ペットボトル製のものだ。

台風が近付いた先週末、時折吹き抜ける強い風に

カラカラと音を立てて回っていた。

 1年前、台風19号が襲来したあの週末も

ちぎれんばかりの勢いで回っていたのを思い出す。

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 この2週間、記者やキャスターたちがそれぞれの視点で取材報告した

「台風災害1年」の10回シリーズがきょう放送を終えた。

ともすれば大きな被災地に目が向きがちだが、

本シリーズでは見過ごされがちな被害や課題も取り上げてきた。

1年で変わったもの、変わらないもの。

節目はあくまでも、それらに気付くための通過点でしかない。

次の災害に向けて今から出来ること。

その答えは、やはり現場にしかないことを改めて感じている。

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【長野市豊野の陸橋から/去年10月13日 筆者撮影】

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