2021/04/09 順調、順調

新年度がスタートし、仕事場の景色も変わりました。

席替えだけでなく、番組キャスター陣も一新。

若手や中堅と呼ばれた面々がメイン席に座り、

ちょっとぎこちなさが見えたりもしますが

番組を懸命に執り回す姿に、遠目でほくそえんだりしています。

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【写真=4月からevery.メイン席の鈴木恵理香キャスター】

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私自身、新年度は報道キャスターから少し離れ

本来の「解説業」に極力傾注する日々を送っています。

国政選挙、コロナ変異株、食と経済などなど、

ある意味「何でもあり」の過酷な中身ではありますが(笑)。

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年度が替わるちょっと前、私自身は眼鏡を新調しました。

何のことはありません、老眼が進んだだけのことでして。

長年お世話になっている内科医の先生と話していたら、

「伊東さん、眼鏡変えたでしょ?」

「分かりましたか。実はちょっと進みまして」

今更、主語(老眼のこと)を言わずとも伝わる会話。

「はは、順調ですな」と先生。

「順調、ですか?」

「階段の昇りがキツくなったり、人の名前が思い出せないとか、

 それと一緒です。年齢を重ねればそれが順調ということです」

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以来、新しい眼鏡をちょっとだけ堂々と掛けています。

順調、順調、自分に言い聞かせながら。

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生放送直前、原稿に追い込まれ目尻が吊り上がりぎみの

若手キャスターを横目で見ながら、

「君たちも順調、順調」と心の内で呟いております。

2021/03/30 春陽

急に季節が入れ替わったような陽気に

春コートなしでも戸外を歩ける日中です。

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取材先の南信・駒ヶ根市内で立ち寄った食堂での一枚。

出されたコップが、厚みあるレトロなデザインで、

窓から差し込む陽差しが何とも小洒落た光景を作っていました。

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年度替わりの今、TSB社内もあちこちで机の引っ越し作業中。

花を見上げてもよし、身近なものをじっと見やってもよし。

弥生の終わり、やはりそわそわしますな。

2021/03/25 桃紅さんのこと

最近、何度も何度も読み返している1冊がある。

『103歳になってわかったこと』(幻冬舎新書/2015年)。

美術家の篠田桃紅(しのだ・とうこう)さんの著書だ。

ご存命であれば、今週末28日が108歳の誕生日だった。

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3年前、上田市で開かれた作品展に合わせ

桃紅さんの道程を辿ったドキュメンタリー制作に

関わらせてもらった。著書もその時に購入したものだ。

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海外旅行に行く日本人が年間数万人の時代に、

独り和服姿でアメリカ行きの旅客機に乗り込んだ桃紅さん。

その自由闊達な画風(書風)で世界のファンに愛された。

「誰の真似でもない。私だけの書き方」

「弟子なんかとろうと思ったことは一度もない」

「人はひとりっきりで生まれてくるんです。

 そしてひとりっきりで死ぬんですよ」

 (テレビ信州のインタビューより)

その力強く歯切れよいひと言ひと言が

見る者、聴く者の背中を押してくれる。

孤独がすなわち寂しいものではない、

孤独とは時に豊かなものである。

桃紅さんの姿勢から、私はそんなことを教わった。

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生涯独身、ひたすら水墨と紙に向き合った

篠田桃紅さん、享年107。

訃報から3週間。あの番組は私にとって宝物である。

2021/03/18 伊那谷とワクチン

使い込まれた木製の机(写真)。

私が小学生の頃、まだ木造だった校舎の片隅に

こんな机があったような記憶がある。

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実はこれ、上伊那郡飯島町の小学校で実際に使われていた。

時代は1945年=終戦当時のことだから

学校名も「国民学校」と呼ばれていた時代である。

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この机の中から見つかった"ある物質"が、

当時の伊那谷で「ワクチン」が製造されていた証しだという。

ワクチンといえば世界が感染症に委縮する現代だが、

時は70数年前に遡る。誰が、何の目的で?

その答えは「軍」、つまり日本軍である。

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極秘裏に行われていたというワクチン製造の背景には、

終戦間際の軍が進めていた化学兵器に関わる一面も

垣間見えてくる。

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木下歌織アナウンサーが数年かけて取材した戦争史の一端。

今夕18:15~の「news every.」にご注目いただきたい。

2021/03/15 豪雪の村から

長野市から高速と一般道を乗り継いで

北へ向かうことおよそ1時間半。

新潟県境が近付くにつれ、風景が白くなっていく。

下水内郡栄村は大人の背丈を超す雪の中にあった。

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「たしかに暖かくはなったが、まあ雪はこんなもんだな」

集落で出会った老人が笑いながら教えてくれる。

長野県北部地震から10年の節目。栄村を訪ねた。

この10年で村の人口は4分の3に減り、

65歳以上の高齢者の割合は人口の5割を超えた。

住民数が1ケタになった集落もあるという。

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「地震がなければ、こんなには減らなかっただろうに」

住民が漏らした言葉が重かった。

建て直され、改修された住宅地のすきまで

雪に埋もれた空き地や更地の多くが、

かつて家があった場所であることを忘れがちになる。

それは「復旧」であって、まだ「復興」ではない。

この意味の違いも、忘れてはならないと改めて思う。

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